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食品工場 揚げ場のスポットエアコン問題を低予算で実現
こんにちは。山下電機システムの原口です。
今回の工事は、大型食品工場内での「スポットクーラー」の施工事例をご紹介したいと思います。
〝なんだスポットクーラーか…〟と思われるかもしれませんが違います。実は普通のスポットクーラーではなく、『空調機を使わないスポットクーラー』です。
なかなか他ではお目にかかれない面白い施工事例となっていますので、ぜひ最後までご覧になってください。
揚げ場の担当になるとすぐに人が辞めちゃう!?
今回の工事の発端ですが、食品工場の人事部の方と雑談していたときに偶然、離職率の話題になったことがきっかけでした。
『他の部署に比べて揚げ場の離職率だけが異常に高いんだよね』というお話でした。
「え?そんなことあるんですか?」と言って、僕らはあまり信じてはいなかったのですが、どうやら人事部の方でちゃんとデータが残っていて、揚げ場の担当になってから2週間以内に辞めてしまう人の割合が、他の部署と比べて30%ほど高いという統計が出ているようでした。
つまり、『揚げ場担当になるとすぐに人が辞めちゃう』ってことなんですけど、その話を聞いてほくらは揚げ場を見に行ったんですね。そこで、実際にフライヤーの前に立ってみるとその理由がわかりました。
〝めっちゃ暑い〟
揚げ物の蒸気も凄いし、スポットクーラーは付いてるけど全然ぬるいし風弱いし、二人に一つだし、とにかく意識が遠のくくらい暑い。いや、「暑い」というより「熱い」。
揚げ場のラインの人に話を聞いてみても、やはり「他の部署から移動してきた人は暑さが嫌で辞めちゃう」という話でした。辞める理由はそれだけではない気もしますが暑さが最後のダメ押しになっちゃってるのかなと思いました。
でも、こういう事ってよくありますよね。現場の人たちは必死の思いで仕事しているのに、それが上層部にまで届いていなくて、一向に設備が改善されないっていうパターンです。小さい工場ならそんなことないのかもしれませんが、大型食品工場ともなると、その箱の中で何千人という人が常に働いていますから、大なり小なり問題が問題のままで眠っているということがよくあります。
今回は偶然にも雑談からその問題に気づくことができたので、すぐに設備部長に話を通して、揚げ場の職場環境改善工事が決まったというわけです。
現地調査
今回の工事の目的は、揚げ場の環境改善で、具体的にはフライヤー担当者に涼しい風を送ってあげるための工事です。実際に現調してみると、まず部屋全体の平均温度が27℃とやや高め、スポットクーラーは8個の吹出がありましたのでとりあえず吹出温度と風速を測定。
吹出① 温度22.6℃、風速10.4m/s
吹出② 温度22.8℃、風速10.1m/s
吹出③ 温度28.3℃、風速4.8m/s
吹出④ 温度28.2℃、風速7.0m/s
吹出⑤ 温度28.2℃、風速7.0m/s
吹出⑥ 温度25.6℃、風速5.1m/s
吹出⑦ 温度28.0℃、風速7.0m/s
吹出⑧ 温度28.0℃、風速7.1m/s
という結果でした。吹出①と②は涼しい風が出てきますが、その他はスポットクーラーとして機能していませんでした。
工事プラン作成
現地調査の次は工事のプラン作成です。現在もスポットクーラーが付いているので、それを新しいものに更新するという単純な方法もありましたが、現状は吹出口が欲しい場所にないということで、当初は新たに空調機を追加する方向で考えていました。
しかし、室外機の設置場所や電源工事、冷媒配管ルートなどを考えるとやはり費用がかかります。スポットクーラーなので部屋全体を冷やす能力はなくていいし、要は、風に当たる人が涼しければいいということで、ウチの社長のひらめきで、隣にある「使用していない冷蔵庫」の室温を調理室まで持ってきたらどうか?ということでプランを作成することにしました。
工場共用部の温度はだいたい20℃前後なので、使っていない冷蔵庫もだいたい20℃の温度に保たれています。調理室フライヤーのスポットクーラー吹出温度は23℃〜25℃が適温だということは経験上わかっていたので、隣の使っていない冷蔵庫の20℃を頂戴して、天井裏にダクトを設置して、ダクトの中に射流ファンを設置し、吹出口でだいたい24℃前後になっていれば低予算で実現可能なのではないかというプランです。
空調機を追加するプランですと機種代金と工事費を合わせて500万円かかる予定でしたが、隣の空気を頂戴してくるプランですと330万円で済むことがわかりました。そして、工事内容と金額を設備部長に提案し、「隣の空気を頂戴してくるプランでいこう!」ということで作戦が決まりました。
細かな空調設計
しかし、単純に隣の部屋から冷たい空気を持ってくるという訳ではありません。空調というのは暑すぎてもダメですし冷えすぎてもダメで、かつ、部屋全体の吸排気のバランスと、空気を吸われる側の隣の冷蔵室の吸排気バランスも考えなくてはなりません。
そして、今回の場合、一番大切なのが吹出口の風速です。吹出温度ももちろん大事ですが、20℃に保たれている場所から空気を持ってくる訳ですから、今回の場合はあまり温度調節をする必要がありません。、問題は1時間にどれだけの空気を吸って、どれくらいの風速で人に直接当てるか?ということです。
吹出口から1mも離れると風はほとんど感じなくなってしまいますし、風速が強すぎても寒かったり、目が乾いたりします。吹出から人までの距離と風速と温度、これらのことを細かく空調計算し、使用するファンを選定するところに1番エネルギーを使いました。
そして、選んだのが「射流ファン」と呼ばれる製品で、ダクトは300φのものを選定し、風速の調整にはインバーター盤を設置し、射流ファンそれぞれに個別でインバーター制御をかけて、制御盤のダイヤルで自由に風速調整できるようにしました。
『風速のインバーター制御と空調設計』ここが今回の施工の1番のポイントです。
施工風景
施工後
まとめ
以上の工事を行い、フライヤー1台に対して吹出口を2つ設け、作業する方が暑くならないように、快適に作業できるようにスポットクーラーを設置させていただきました。しかし、実際には空調機を新たに新設することなく、最小限の設備と最小限の支出で問題を解決することができました。
フライヤー担当者の方も「全然汗が出ない」と言って喜んでくれましたし、設備部長も低予算で問題解決できて喜んでくれました。
山下電機システムは、プラントの電気設備配線工事をメインとしていますが、その他にも空調工事、空調負荷計算、図面作成、空調設備コンサル業も行っております。
特に大型の食品工場や、特殊な原料を扱うプラントなど、特殊環境下での空調工事の知識と経験がありますので、他社様で断られた案件や、他社様の施工では納得いかなかった案件などあれば、ぜひお気軽に「お問い合わせ」よりご連絡ください。
今回のように、大手空調メーカーさんでは実現できないような、使用環境に合わせた空調カスタマイズができますので、低予算での問題解決能力に長けています。空調設備や電気設備でお困りのことがあれば是非、ご連絡ください。
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